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「C.C.起きて」 惰眠を貪っていたC.C.は、アーニャに叩き起こされた。 アーニャが勝手にカーテンを開けたため、既に太陽が頂点を過ぎた時刻だと解った。眩しいほどに明るい日差しが室内を明るく照らし、まだ私は眠いんだと、夢の中へ戻ろうとするC.C.を再びアーニャは揺り起こした。 「起きてC.C.、早く」 一体何なんだ。 普段は好きなだけ眠らせてくれるくせに、今日はどうしたんだ。こんなにいい天気なら昼食時でもない限り、お前はオレンジの世話や農作物の世話で外にいるはずだろう。 そこまで考えて、何でアーニャがいるんだ?と再び疑問を感じた。 「C.C.、カレンが来てる」 アーニャの声は感情がほとんど出ないが、それでもいつになく焦っている事が解る。 カレンが? あの熱血娘がなのをしに? アーニャの様子からも嫌な予感しかしない。 ここに来て3日。 たった3日ではあるが、スザクはかなり落ち着きを取り戻していた。 これは、目が見えないという事をよく理解し、世話をする者が側にいることが大きいのだろう。それに、言葉は少ないが支えようとしてくれているアーニャ、口を開けば熱血土根性論を繰り広げようとするため接触禁止となっているが、スザクを常に気にかけてくれているジェレミア。そして、口は悪いが、一人で鬱々と抱え込ませないために、話し相手をしているC.C.。この4人に囲まれ、荒れていた感情がようやく静まり、正常な思考を取り戻し始めていた所に、熱血ド根性娘の登場か。 C.C.は急いでベッドを下りると着替えることなく、シャツ一枚のまま部屋を後にした。 ・・・なるほどな。 アーニャが慌てて来ただけの事はある。 すでに、酷い状態となっていた。 「紅月、いい加減にしないか!」 「でも、こんな甘ったれた状態で、いつまでもここにいてどうするんですか!皆で甘やかすから、駄目なんですよ!あんたわかってんの?目が見えなくてもあんたはゼロでしょ!いつまでうじうじぐだぐだしてんのよ!みんな世界のために頑張ってるのよ!」 ジェレミアが何を言ってもカレンは止まらず、室内に押し入った挙句スザクを捕まえて延々と、ゼロなんだから戻って来いと捲したてていた。 あまりにも一方的な物言いに、スザクの何かがブツリと音を立てて切れた。 「ゼロ?こんな目の見えない欠陥品がゼロだって!?こんな僕をゼロに戻して何をさせるって言うんだ!」 「あんたね!目が見えないぐらいで、ルルーシュから受け継いだゼロをやめるっての!?見えなくてもやれることは、いくらでもあるでしょう!」 「止めないか紅月!失明の苦しさを甘く考えすぎだ!!」 体の機能を失う苦しみがどれほどのものか、失った経験がなければ理解できないのかもしれない。経験者であるジェレミアはカレンの暴言に怒りを露わにし、これ以上の暴言は許さないと怒鳴りつけたのだが、カレンは止まらなかった。 敵として、あるいは学生としてのスザクをカレンが知っている。バカが付くほど明るく元気で、唯一全力で張り合える相手でもあった。 だが今のスザクにその面影はない。 ある程度回復したとはいえ、一人でいる間は項垂れて塞ぎこんでいる事が多く、先程までC.C.を含め全員が傍を離れていたため、まさにその状態だった。 そんな姿を目の当たりにしたカレンは、情けないと怒鳴り散らしているのだ。 アーニャがいうには、スザクを一度ナナリーの傍に戻す話が出ていて、知略に関してはシュナイゼルが、武力に関してはカレンがサポートするのだという。 勝手な話だなと、C.C.は呆れてため息も出なかった。 「シュナイゼルが考えて、カレンが動く?なら、俺は何のために戻るんだ!?そこにいるだけでいいなら、別の誰かを用立てればいいだけだろう!」 「そんな訳にはいかないでしょ!あんたね!ルルーシュがあんたにゼロを託したのよ!あんたにはね、ゼロとして世界と人々を導く責任があるの!」 あれがどんな思いで交されたものなのか、どんな感情を向けあったものか、どれほどの決意が、願いがあったのか。結果だけ見て理解したつもりになっている人間に軽々しく言われたことで、スザクはますます激昂した。 「ああそうだよ!託されたさ!で?だからなんだ!?こんな目も見えず、自分の世話すらろくにできない人間が、世界を動かす?人々を導く!?ふざけるな!」 「甘ったれないでよ!ナナリーちゃんだって、目が見えなかったわよ!」 「それとこれとは別だろ!」 「同じじゃない!!」 スザクが感情をあらわにして反応するのは悪い事ではないが、内容が悪すぎる。 これでは悪化させるだけだ。 大体カレンの話は、最初からスザクの事を一切考えていない。 スザクの言う通り、代役を立てれば事足りることなのに、それでは自分たちが納得出来ないからと、スザクを表舞台に戻そうとしている。 ゼロにお飾りになれと言っているようなものだ。 そしてC.C.でもイラッとする内容、ルルーシュ関係が含まれているため、スザクのために動くのは癪に障るが、このまま放置できないという思いが湧き上がってきた。 仕方ない、お前を守るのは今回だけだぞ。と目を細めた。 「おい、お前たち、煩いから黙れ」 C.C.の声に、二人はピタリと口を閉ざした。 口論に夢中になり、C.C.が来た事にも気付いていなかったのだ。 「C.C.、あんたここにいたの?」 って、あんたその格好・・・と、また文句を言いだしそうだったので、C.C.はさっさと口を開きその言葉を止めた。 「いて悪いか?私はゼロの愛人だろう?」 ゼロがスザクだと言うならば、今はスザクの愛人という事になる。 傍にいてもおかしくはないはずだとC.C.は当然のように言った。 「悪くはないけど・・・」 シャツ一枚着ただけのC.C.は、ずかずかと二人の傍まで歩き、スザクの隣の席に腰を下ろした。C.C.の恰好に文句を言いたいが、やっと口論が収まった事にジェレミアは安堵の息を吐き、アーニャはキッチンへ向かった。 C.C.が来たことでペースを乱されたのか、カレンが大人しくなったため、再び騒ぎ出す前にと、C.C.は口を開いた。 「カレン、スザクを連れ戻す話は、一体誰の案だ?」 C.C.は、まずは当然の疑問をぶつけることにした。 **** 最初、カレンをスザク側にしようと思ってたけど、カレンがスザクを引っ張って、スザクを支えていく姿が全く想像できないので味方案はやめて敵側に。 慰める云々は別にして、リフレインを打とうとするほど追いつめられてたルルーシュへの対応思い出したらこうなった。 |